不思議な話(二ーマンのピク詰め)復刻版H

      ー実際に体験した不思議な出来事の記録ですー

101 「ネズミ」

 今思えば、山のアトリエではいろんな生き物に遭遇しました。タヌキやキツネなどは普通にその辺にいて、トイレで用を達している時に窓の外のイノシシと目が合うことなどはよくあることでした。アトリエのすぐ裏は山の斜面になっていたので、イノシシがよく山芋を掘り返していたのです。

屋根裏にはイタチかテンが住み着いていたし、見たことのない模様をしたヘビもいました。見たこともないと言えばこんなことがありました。

ある夏のことです。夜遅くまで製作していると廊下の方で「カツッ、カツッ」と物音がするので目をやると、ネズミが一匹こちらに近付いてくるのが見えました。ところが確かにネズミなのですが形体が普通ではないのです。

明るい茶色をした小さな可愛いネズミなのですが足が異常に長いのです。胴体の2倍以上はありました。それがカンガルーのようにピョンピョン跳ねながら私の方に近付いてくるのです。一度テレビか何かで「トビネズミ」の映像を見ていましたからそれほど驚きませんでしたが、テッキリ外国のネズミとばかり思っていましたので日本にも居るのだということと、こっちに近付いてくるということに少々驚いていました。

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しかしテレビで見たトビネズミはもっと目も耳も大きくてシッポの先にフサフサの毛が生えたアニメみたいに可愛いネズミだったように記憶していたのですが、目の前まで近付いてきたそれは色こそ可愛い感じですが、普通のネズミの子供の足だけが長くなっただけのあまり派手さのない地味な可愛らしさなのです。

たまたまパンの食べ残しがあったので少しちぎってあげると両手でシッカリ持って食べる姿が何とも可愛いのですが、ずっと見ていると何の意味があるのかわからない細くて長い足の上に常に床から10センチ位の高さの位置にある胴体とのバランスが何だかキモチ悪く感じてきました。その気持ちを察したかのようにネズミはパンを持ったまま廊下の奥へ姿を消しましたが、それっきり2度とそのカンガルーネズミを見かけることはありませんでした。

コオロギのアトリエ