102 「闇」
生まれて初めて本当の「闇」を体験させていただいたのがその山のアトリエです。民家は50メートル離れたお隣さんと谷の向こう側に2軒あるだけで、夜の11時を過ぎればどの家にも明かりはありません。勿論街灯などもありませんから星も月も出ていない夜は真っ暗なのです。
この「真っ暗」というイメージはあなたが今思っている「真っ暗」とは違うと思います。本当に真っ暗なのです。
自分の手のひらをどんなに目に近づけても見えないのです。自分が目を開けているのか閉じているのかもわからないので、指で目を触ってみるくらいの暗さです。
ところがそんな真の闇の中なのに何故か誰かに見られているのがわかるのです。
おそらく森の動物たちの視線なのでしょうが、その数が半端ではないので、まるで森全体に見られている感じがしてチョッと不思議な感覚を体験することになります。
コオロギのアトリエ