127 「O(オウ)」
30代の頃、どうしても作業服の『ツナギ』が欲しくて近くの専門店に買いに行ったときのお話です。作業服の専門店というだけのことはあってツナギの種類や色は豊富でかなり迷った末に結局、白のオーソドックスなものに落ち着きます。
とりあえず試着してみることになったのですが、身長からしてサイズは『L』くらいで良いと思って試着したツナギはどうも背中が突っ張るのでワンサイズ上の『LL』にしてみたのですがそれでも背中が窮屈でした。係りのお姉さんが持ってきてくれた『3L』でもイマイチ背中に違和感があるのです。
その時点で股下の長さは逆に20センチほどオーバーしていたわけですが、それを見た係りのお姉さんは事もあろうにこう言ったのです。
「お客さんの座高であれば身長が2メートル以上なければおかしいですね」
私は恥ずかしいやら悔しいやらで泣きそうになりながら、ツナギを購入するのをほとんどあきらめかけていた所にお姉さんの「一番大きいO(オウ)というサイズがあるのですが…」というお言葉。
『オウ?』
生まれて初めて耳にする音の響きに一瞬ひるんだのですが着てみてビックリ、というよりガッカリでした。背中は問題なかったのですが、袖が長すぎて手をツナギの外側に出すことが出来ないのです。足に至っては松の廊下状態で、体で外に露出しているのはかろうじて顔の部分だけでした。
それを見たお姉さんがクスッと笑ったのを私は見逃しませんでした。勿論購入はしませんでしたがそれ以来『O』が何の略なのかが気になって仕方がないのです。『大きい』の『O』なのでしょうか。それならビッグの『B』で良いと思うのですが…。
コオロギのアトリエ