不思議な話(二ーマンのピク詰め)復刻版H

      ー実際に体験した不思議な出来事の記録ですー

149 「エメラルドグリーン」

子供の頃に流行った遊びに『パッチン』があります。メンコのことなのですが私の地域ではそう呼ばれていました。パッチンには丸い形のものと長方形のものと2種類あって大体は当時人気のアニメの主人公が描かれたものが主でした。

どちらかというと長方形のパッチンの方がメインだったのですが、お気に入りのパッチン目当てに日々奮闘するわけです。中でも『写真』と呼ばれる貴重なパッチンがあり、数が少ないため滅多に公の場に出てこないそれは長方形のパッチンの中でも一際異彩を放つ、パッチン仲間の間でもあこがれの存在でした。

その中でも特に私が気に入っていたのは、鞍馬天狗と町娘が二人並んで川の袂でたたずんでいる写真のパッチンでした。ところがその写真は印刷ミスなのかワザとそうしていたのか、鞍馬天狗の衣装と頭巾がエメラルドグリーンだったのです。

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当時頭巾物が流行っていましたから、もしかするとそれに便乗した類のものだったのかもしれません。それにしてもそのエメラルドグリーンの美しさは衝撃的で、そのパッチンを目にした日などは興奮して夜も眠れないほどでした。

当時はカラーテレビなど無い時代でしたから色彩に敏感だったのかも知れません。結局そのパッチンをゲットすることは出来ませんでしたが、不思議なことに50年近く経った今でもその構図は鮮明に覚えていますし、未だにエメラルドグリーンの色を目にすると少しドキドキするのです。

コオロギのアトリエ