166 「モモンガ」
私は欲しいものがあると、その写真やパンフレットを手に入れ隅から隅まで観察し、自分が実際に手にしている所をイメージします。今はインターネットで可なり詳しく調べられますのでイメージするのも随分と楽になりました。
そのイメージがリアルであればあるほどそれを手に入れる確立は高くなるようです。ところが子供の頃はそのイメージを無駄に物質化してしまう事もあります。たとえばこんな不思議なことがありました。
小学校の低学年の頃は3歳下の妹とひとつの部屋の中央に置かれた2段ベッドを挟んだ両サイドの空間をそれぞれの勉強部屋として使っていました。
イタズラ盛りですからお互いにいろんな作戦で相手にイタズラを仕掛けるのですが、その夜は下の段のベッドで眠る妹がトイレか何かで部屋を出た隙に妹の勉強机の下に身をひそめ、妹が部屋に戻りベッドに入った所でタイミング良く適当な所を爪で引っかき怪しい音を出すというドッキリでした。
私の技術が優れていたのか妹の想像力が勝っていたのか、しばらくベッドの中で様子をうかがっていた妹は「モ、モ、モモンガァー」と悲鳴を上げながら部屋を飛び出し父親を連れて戻ってきます。その頃には私は何食わぬ顔で2段ベッドの上の段で眠ったふりをして、笑いをこらえながら2人の話を聞いています。
父「本当にモモンガだったのか?」
妹「うん、間違いない。1メートルくらいのモモンガ」
父「どこにも居ないぞ…気のせいだろ」
妹「絶対いた!カリカリッて音もしていたし…」
しばらく妹と父親は机の下やベッドの下などを調べていましたがその内あきらめます。ベッドに入った後も妹はどうしても机の下が気になるらしく中々寝つけないようでした。
ところがしばらくすると…聞こえるのです。まさかと思いましたが妹の机の下から「カリッカリッ…カリカリッ」と不気味な音が聞こえてくるのです。
再び妹が部屋から飛び出した後、妹の机の下から勢いよく飛び出して部屋の中をしばらく走り回った後、ドアの隙間から廊下に飛び出した大きなリスのような生き物の姿を私は確かに見たのです。
コオロギのアトリエ