183 「勘違い」
普段はマズそんなことはしないのに、タマタマ何かの拍子でそうしてしまったことがとんでもない事態を招いてしまうという事があります。
あれは数年前の蒸し暑い夏の夜のことです。家には4匹のワンがいて彼らの生活するスペースはお隣さんとブロック塀で隔てられた裏庭なのですが、その夜は異常に吠えるのです。普段はすぐに治まるのですがその日に限ってなかなか治まりません。
夜中の10時近に4匹のワンが吠えまくるのはご近所に申し訳ないと思い、窓を開けて裏庭のワンを叱るのですが、普段はそんな言い方はしないのに何故かその時はこんな風に言ってしまったのです。
「うるさい!静かにしないか!今、何時だと思っているのだ。ご近所の迷惑を考えたことがあるのか!いい加減にしろよ!」
不思議なことにいつもはカツゼツも悪くあまり声も通らない方なのですがその日に限って私の声は完璧な発声で真夏の夜の空間に響き渡りました。ところがワン達は静かになったのですが、何か様子がおかしいのです。
すごく良い匂いがするのです。よく見るとブロック塀の向こう側に明かりが点いていて、お隣の庭に人が居るのです。何と家族で焼肉パーティーのまっ最中だったのです。
ワンが吠えたいたのはそのせいだったのだと理解したときにはもう手遅れで、申し訳なさそうに静かに肉を焼くお隣さんは確実に自分たちが言われたと思っているようでした。その日以来お隣さんは私と目を合わせてくれません。
コオロギのアトリエ