不思議な話(二ーマンのピク詰め)復刻版H

      ー実際に体験した不思議な出来事の記録ですー

198 「傘の人(後)」

美術作家のTさんは随分前から存じ上げてはいたのですが、会場でご本人と作品の話しはすることはあってもプライベートな話をする機会はほとんどありませんでした。

ところが最近ヒョンな事から個人的にかなり突っ込んだ部分のお話をさせていただくチャンスに恵まれ、そのときにタマタマ映画の話になりタマタマ例の話になったのです。

Tさんは私より2~3歳年上ですので当時は20~21歳です。小雨の降る日に友達に誘われて(私の感だとTさんから誘っているものと思われます)例の映画館に入るのですが、Tさんは地元でも有名なお嬢様だったらしく、顔を見られてはまずいと思い傘で顔を隠すことを思いつくのですが『ボッ』という傘が開く音で逆に注目を集めてしまいます。
 
                                   傘-s


傘で顔は隠せるのですが肝心の映画が見ることが出来ません。そこでTさんが思いついたのが最前列で傘を後ろに傾ければ映画も見ることが出来るし正体もバレないだろう、ということだったのですがそれがオヤジ達の不評を買います。

仕方なく傘を閉じるのですが、後姿と言っても顔は隠さなければなりませんから閉じた傘を頭に被る形になってしまいます。例の三角形の状態です。それでも映画を見たかったTさんは閉じた傘の隙間からスクリーンを見ようと悪戦苦闘するので大きく左右に揺れてしまいます。

その動きが親父たちの感情を逆なでする結果となってしまい、さすがのTさんもそれ以上はその場に留まることが出来ず映画館から逃げるように退出するのですが勿論顔は傘で隠した状態の三角のままです。

これが30年前の真相でした。30年の時を隔ててひとつの謎が笑い話になった不思議な瞬間でした。

コオロギのアトリエ