不思議な話(二ーマンのピク詰め)復刻版H

      ー実際に体験した不思議な出来事の記録ですー

203 「虎」

造形の仕事を始めた当初は宣伝になればと思い、仕事で使う軽ワゴンの屋根にFRP(強化プラスティック)で造った虎を乗せて走り回っていました。

自慢ではありませんがその虎がとても良い出来栄えだったものですからそれなりに話題にはなったのですが、あまりにも虎がリアル過ぎて虎に驚いた人が事故を起こすことがありました。

歩行者は驚いても転ぶことはありませんが、自転車に乗った人と交差点で出くわしたりすると驚いて転ぶことがあったのです。
夜は更に危険度が増し、対向車が驚いてハンドルを切りそこなうことも一度や二度ではありませんでした。

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どれだけリアルな出来栄えだったかと言うと、ある夜すれ違った乗用車が急にUターンして私の車の後ろから仕切りとパッシングを繰り返します。たまたま赤信号で止まった私の車に横付けして私の車の屋根を指差しこう言います。

隣の人「や、屋根に虎が乗っていますよ」

私「はい、乗せているのですよ」

隣の人「えぇ!乗せているって…お宅の虎なのですか?」

私「はい、私の虎です」

隣の人「えぇ!…えぇ?…えぇ!…」

おそらくその人は本気で本物の虎と思っていたと思われます。


その後、あまりにも危険だと言うことで『虎』から『ワニ』に変えたのですが、地味な色具合と平べったい形状とでまったく注目を浴びることがありませんでした。

コオロギのアトリエ