205 「自転車」
不思議な事と言うのは日常の至る所で起こっていて、私達はそれに気づかずただ見逃しているだけなのではなかろうかと思ったのは昨日の朝のことです。
私の家から車で市街に出るまでに道路の両サイドには結構な自然が残っているのですが、車を走らせながらフト道路の左側に広がるなだらかな小高い山というか丘に目をやると、お年寄りが自転車を押しながらその丘を登っているのが見えました。
何のことはない当たり前の光景なのですが何かが気になったのでもう一度見てみます。建物の影になってお年寄りが見えなくなるまで4~5秒しか確認できませんでしたが、お年寄りは自転車に積んだ黄色いかごを両手で後から必死に押しながら登っていたのです。
そうなのです、不思議なことに自転車のハンドルはフリーだったのです。前から誰かがハンドルを引っ張っていたわけでもなく、結構な坂道を自転車はお年寄りに後ろから押される状態のまま登っていたのです。
ウッカリすると危うく見逃してしまいそうな事ですが、もしかするとそんなことは普通に身の回りで繰り広げられていて、忙しさに翻弄される私達にはそれが見えていないだけなのかも知れません。
コオロギのアトリエ