不思議な話(二ーマンのピク詰め)復刻版H

      ー実際に体験した不思議な出来事の記録ですー

211 「ゴリラ」

その動物園でこんなことがありました。その日は祭日か休日でかなりの人が園内にいたのですが、私がサル達に水をあげていると小学生くらいの子供がサルの檻の前を何か叫びながら駆け抜けていきました。別の場所にいる友達に何かを伝えようとして走っていたと思われます。

その少年の叫んでいた内容が尋常ではなかったので私は急いでゴリラのいる檻に行ってみました。その少年は「ゴリラが暴れている…」と叫んでいたからです。

ゴリラが檻を抜け出し本気で暴れたら人間の力ではどうすることもできません。人命に係わるのです。ところがゴリラの檻はいたって普通でゴリラはいつもどおりに檻の中でのんびりしています。

何故かその横にあるキャンピングトレーラー(その動物園では従業員はそれぞれ自動車に連結して移動出来るタイプのキャンピングカーで生活していました)の周りを客が取り囲んでいるのです。

                                    ゴリラ-s

キャンピングトレーラーの中から確かに猛獣のような声が聞こえるのですが、すぐに察しはつきました。そのキャンピングトレーラーは夫婦喧嘩の耐えない熟年従業員のキャンピングトレーラーで、事もあろうに昼間から中で夫婦喧嘩をしていたのです。特に激しい奥さんの「ウオォォー!グワァァァー!」という声を少年は勝手にゴリラが暴れていると勘違いしたのです。

「何でもありませんから…ゴリラじゃないですから…」

そう言って客を解散させるのですが、残念ながら隣のゴリラよりも人気はありました。

コオロギのアトリエ