不思議な話(二ーマンのピク詰め)復刻版H

      ー実際に体験した不思議な出来事の記録ですー

217 「落とし穴」

子供の頃に近所の子供達の間で『落とし穴』が流行ったことがあります。制作場所は近所の広い空き地に限定されていて、それぞれのグループに分かれ『落とし穴』の品評会が行われるのです。

チームは3チームあり1チームが制作している間は他のチームは空き地に近付くことは許されません。OKが出ると空き地のどこかにある落とし穴を探すのですが、最初のうちは穴も小さく出来も幼稚ですぐに見破られていた落とし穴は回を重ねるごとにグレードを増し、ブームの最後の方には様々な技術を駆使して造った落とし穴はそれを造ったチームにも発見できないくらいに見事なものになっていました。

最終的には直径は2メートルを超え、しかも時間差で落ちる仕組みまで考案されていました。それが数個同時に造られるまでに技術は向上したのですが、なぜか突然『吹き矢』のブームが到来して『落とし穴』には誰も興味を示さなくなります。

                おとしあな-s

それからしばらくして子供達が吹き矢で盛り上がっているときに例の空き地で大人たちが大騒ぎをしているので見に行ってみると、何と地面に自動車が突き刺さっているではありませんか。

自動車の車体は半分ほどが地面に埋まり、ほぼ直立の形で車体の底を見せているその光景は子供心にシュールで不思議な感じがしたのを覚えています。どこかの家が法事か何かで駐車場代わりにその空き地を使っていたようなのですが、残念ながら落とし穴はまだ1つ残っていたようです。 

コオロギのアトリエ