不思議な話(二ーマンのピク詰め)復刻版H

      ー実際に体験した不思議な出来事の記録ですー

219 「棒幅跳び」

その小川の中流には川の淵をコンクリートで補強された部分がありました。小川は水量こそありませんでしたが幅は5メートル近くあり、誰かの発案でそこを物干し竿のような孟宗竹を使って棒高跳びよろしく跳び越えるという遊びが流行るのですが、最初の頃は誰一人として成功しませんでした。

中学生でも向こう岸にとどかず川に落下してしまうのですから小心者の小学4年生の私にはとても無理な遊びで、もっぱら見学に終始することになります。

そのうち川の中央でバランスを取り、竹をよじ登って向こう岸に渡ることに成功した者が現れるとその技を真似して続々とクリヤーする者が出てきます。更には竹の弾力を利用して華麗にジャンプする者まで現れ『棒幅跳び』は一気に盛り上がるのですが、その頃にはもう遊びというよりは『競技』のようになっていました。

                  ぼうはばとび-s

気がつくとクリヤーするのはあたり前になっており、いつの間にか着地点の距離を競うようになっていました。ところがある日、竹の弾力にこだわっていた中学生の竹が折れ、落下して大怪我をするという事故が起き、その競技、いや、遊びは大人たちから強制終了させられます。

『棒幅跳び』はわずか3週間という、ブームの中でも最短のブームで終わることになるのですが、不思議なのは一度ブームが去った遊びは2度と復活しなかったということです。いくつかの遊びは結末が悲惨な結果で終わったからということもありましたが、そうではない遊びもあったところを見ると、おそらくそのときに流行った遊びを完全燃焼できた所に持ってきて次の遊びが更に魅力的だったからだと思います。


…あっ、そう言えば『ひたすら崖から飛び降りる』というのもあったなぁ…

コオロギのアトリエ