不思議な話(二ーマンのピク詰め)復刻版H

      ー実際に体験した不思議な出来事の記録ですー

220 「風鈴」

小学3年生の頃の話です。夏休み直前の図工の時間に『風鈴』を作りました。既製品のキット状のものを組み立てて着色するくらいのものだったと思いますが、とても良い音色に満足したのは覚えています。

 


その風鈴は終業式の日に先生の批評付きで家に持って帰ることになるのですが、なぜかその批評は風鈴が風を受ける為にぶら下がっている短冊のようなものの裏側に赤いマジックで書かれていたのです。子供心に『何て美的センスがないのだろう』と思いました。

おそらくその当時は『美的センス』という表現は使わなかったと思いますが、そのような意味のことは思っていたはずです。しかもあろうことかそこにはこう書かれてあったのです。

とてもマズシイ感じがしますね!


その頃の我が家は決して裕福ではありませんでしたが、貧しいと言うほどの生活ではなかったように思います。いたいけな少年の心は傷つくのですが、それ以上にショックを受けたのは両親の方でした。

ふうりん-s



楽しい夏休みの前日に妹も参加しての家族会議です。

「色が悪かったのかなぁ」

「いや、短冊の位置に問題があるんだよ」

暗い雰囲気とは裏腹に窓際で心地よい音色を奏で続ける風鈴をにらみつけながら小一時間が過ぎようとした頃です、突然小学1年の妹が声を張り上げます。

「これ、スズシイじゃない?」

ハッとして全員で短冊を読み返してみると、何とそこには「スズシイ」と書かれているではありませんか、不思議なことに家族全員が「マズシイ」と読み違いをしていたのです。結局は笑い話になったのですが、確かに「マズシイ」と書かれていたのは全員で確認しているのです。

今でも風鈴を見るとあの時の不思議な感覚を思い出します。

コオロギのアトリエ