不思議な話(二ーマンのピク詰め)復刻版H

      ー実際に体験した不思議な出来事の記録ですー

227 「クマゼミ」

予期せぬ出来事というのはこちらが前もって予測出来ていなかったという落ち度がありますからそこ々のダメージを受けてもある程度はあきらめもつきますが、予測が不可能な事の場合は『あきらめがつかない』とか『納得がいかない』とかいう次元ではなく何だか不思議というか美しさのようなものさえ感じてしまうことがあります。

あれは私がまだ小学4年生の頃の話です。裏山の方向に建てまわしされた縦長の子供部屋は手前が妹の部屋で奥が私の部屋でした。長い廊下の外側は何枚もの大きなガラス戸が壁の代わりをしていました。

廊下の突き当たりは簡単な手すりがあるだけで、チョッとしたひさしのような物はありましたがガラス戸などはなく雨が降ると廊下の先端はいつもビショビショでした。

地形の関係で子供部屋の先端は地上から2,5メートル位の高さがあり、私はその手すりにもたれて裏山や小川を眺めるのが大好きでした。

その日も廊下の手すりにもたれて裏山で鳴くアブラゼミの声を聞きながら夏休みの午後のひと時を満喫していたのですが、突然体が重力を失ったような感覚がしたかと思った次の瞬間に私の体は手すりを飛び越えて2,5メートル下の地面に背中から叩きつけられていました。

                 くまぜみ-s

私はしばらく気を失っていたようです。母親の声で目を覚ました時になぜかベランダで妹が大笑いをしているのです。どうも小1の妹が私の足を抱えて手すりの向こう側に私を投げ落としたらしいのです。

意味がわかりませんでした。喧嘩をしていた訳でもなければ恨みをかった覚えもないのです。訳がわからないので怒りも湧いてこないのです。妹に理由を訊ねるのですが、その答えは近くの柿の木で鳴き始めたクマゼミの方が気になるくらいに当たり前過ぎて、つい笑ってしまいました。

妹『…落としたかったから』

コオロギのアトリエ