不思議な話(二ーマンのピク詰め)復刻版H

      ー実際に体験した不思議な出来事の記録ですー

234 「怪談」

たまには身の毛もよだつような怖い話のひとつもあったほうが良いのでしょうが、不思議な体験に比べると恐怖体験は意外と少ないのです。ましてや霊体験となると数えるほどしか経験がなく、その内のいくつかはすでにアップしていますので残っているのはこんな話くらいです。

造形の仕事をしているときにある取引先の会社のパーティーに呼ばれます。パーティーと言ってもその会社のだだっ広い工場の中に適当に並べられたテーブルにいろんな飲み物や食べ物が用意されただけの至ってシンプルな立食パーティーでしたが、時はバブルの真っ只中ですからお寿司のコーナーや焼肉のコーナーなども用意されていてその料理の豪華さは半端ではありませんでした。

何だかんだで50~60人は集まっていたパーティーが最高潮に達していたときです。会場の隅っこで知り合いのMさんがMさんの彼女と何やらもめているのが目に入ります。女性の態度が尋常ではないので心配して見ていると、Mさんも手に終えなくなったらしく私にフォローを求めてきました。

彼女は泣きながら「帰りたい」とMさんに訴えているのですがMさんは立場上パーティーを抜けられなかったのです。結局Mさんは彼女を私に押し付けたままどこかに行ってしまいます。その女性は感性がとてもデリケートだとMさんに聞いていましたので、おそらくはアルコールの飲みすぎで情緒が不安定になっているのだとばかり思っていたのですが、実はそうではありませんでした。

少し冷静さを取り戻した彼女は私に『天井を見ろ』と言うのです。その工場の天井は作業の性質上かなりの高さがあり、見上げる為にはかなり上体を反らすことになるのですが、私は天井を見上げたまま身動きが取れなくなりました。

                  怪談-s
 

照明の関係で少し陰にはなっていましたが、工場のほぼ真ん中の位置の鉄骨がむき出しになったスレートの天井付近に人が浮いていたのです。

 

つづく

コオロギのアトリエ