不思議な話(二ーマンのピク詰め)復刻版H

      ー実際に体験した不思議な出来事の記録ですー

235 「怪談(後)」

正確には白いワイシャツ姿の男性が首にロープを巻いたままぶら下がっていたのですが、気がついた時には私は彼女の手をとって工場の外に出ていました。

ショックで言葉も出ない私に『あれは霊的な現象で、見えているのは一部の人だけだ』と彼女は言うのですがそのリアルさは現実のものと何ら変わりがありませんでした。気持ちが落ち着くのを待って恐る恐る工場の天井を見た時にはそこに男性の姿はなく、会場内でそれに気づいた人間も我々2人以外にはいないようでした。

                  怪談2-s

私はそういった現象の原因を自分なりに理解しているつもりだったのですがその時の現象はどうしても説明がつかないことがありました。それまで霊的な現象というのは亡くなられた人の過去の想念や思念が何らかの条件の下に映像化したものなのだろうと思っていたのですが、そのとき見た天井からぶら下がっていた男性は何を隠そう目の前で楽しそうに食事をしているその会社の社長だったからです。

何が何だかわからないまま2年の時が過ぎ、そんなこともほとんど忘れかけていたバブルもピークを過ぎたある日のこと、例の社長が工場で自らの命を絶ったと言うのを聞いて相当なショックを受けるのですが、同時にものごとは既に定まっているのだということに何とも言えない空しさのようなものを感じた瞬間でもありました。

コオロギのアトリエ