不思議な話(二ーマンのピク詰め)復刻版H

      ー実際に体験した不思議な出来事の記録ですー

238 「ゴロ―」

 

 

 

その動物園にはゴローという子供のチンパンジーがいて、ゴローはいつも調教師のTさんと一緒でした。しかし寝るときだけは別々で、Tさんは園内のキャンピングトレーラーで、ゴローは数十メートル離れた巨大テントの中の鍵のかかった檻の中で寝ていました。


ある夜Tさんのキャンピングトレーラーにお邪魔してコーヒーをご馳走になっていたときのことです。気がつくと夜中の11時を過ぎていましたのでそろそろ失礼しようと思っていると、キャンピングトレーラーのドアを誰かがノックします。

こんな夜中に誰だろうとドアの側にいた私がドアを開けたのですが、そこに立っていたのは全身毛むくじゃらの小さな生き物でした。すぐにそれがチンパンジーのゴローだとわかりましたのでTさんに「ゴローが遊びに来ましたよ」と言うとTさんは驚いた様子でしたがすぐにゴローを抱きかかえ熱い抱擁を交わします。

                 ゴロ―-s

後で聞くとそういう時は絶対に叱ってはダメだそうで、逆にほめて上げた方がその後の調教には良いとのことでした。ゴローを抱えて檻に戻る途中に食堂があるのですが、驚いたのはその食堂の中のほとんど全ての物はゴローによって『開けられていた』ということです。

醤油のフタだったり茶筒のフタだったり食器棚の引き出しだったり、電子ジャーのフタだったり何故か開けられるものはほとんどが開けられていたのです。おそらくその時のゴローは檻を脱走する為に『開ける』と言う事に集中しすぎてそのような行動に至ってしまったのだろうと思われるのですが、不思議なのはTさんのキャンピングカーのドアだけが開けられずにノックされたということです。

コオロギのアトリエ