不思議な話(二ーマンのピク詰め)復刻版H

      ー実際に体験した不思議な出来事の記録ですー

251 「ブーメラン」

小学校の6年生の頃にテレビマンガの影響だと思うのですが『ブーメラン』が欲しくてたまらなくなったことがあります。自分で木を削って作れるほどの技術はありませんし、そもそも投げたものが戻ってくるという仕組み自体が良くわかっていないのですからお話になりません。

それでも欲しいという衝動は抑えきれず結局歩いて2時間かかる町の大きなデパートに、なけなしの小遣いを握り締めて探しに行きます。自分のイメージしていた木製のブーメランは見つけることは出来ませんでしたがオモチャのコーナーでプラスティックと言うよりは硬いビニールのような素材のブーメランをゲットすることができました。

その580円のブーメランは半透明の白色で、くの字に折れ曲がった片方の先端に滑り止めのライン状凹凸があり、その部分が赤い色で塗り分けられているという理想とはかなり違ったものでしたがそれでも生まれて初めて手にするブーメランにそれなりの満足感を得ることはできました。

帰りの道すがらそれを一刻も早く飛ばしてみたいという衝動を抑えることが出来ず結局道路の脇に広がった麦畑めがけ投げてしまうのですが、本人のイメージとしては麦畑の上をきれいな円を描いて手元に戻って来るのを想像していたのですが現実は直線で15メートルほど飛んでいったまま失速して麦畑の中に落下です。

 ぶーめらん-s

経験上その様な状況の場合、たいがい見つからないことの方が多いのですがラッキーなことに5分程度の捜索で見つけてします。ところが見つけたブーメランは何故かボロボロなのです。薄汚れた半透明のボディーは少し黄色く変色し、全体に傷だらけで赤い塗装もほとんど剥げ落ちていているではありませんか。

一度麦畑に突っ込んだだけでその様になるものなのかと不思議に思いながら麦畑を引き返す途中で何ともうひとつブーメランを見つけてしまいます。その真新しいブーメランが本来のブーメランだったのですが、2つを見比べてみると形状と裏側のメーカーの刻印から同じ製品であることがわかりました。

もしかしたら数年前にも自分と同じような考えの少年がいて、その麦畑で同じようにブーメランをなくしたのでしょうか、それとも…

コオロギのアトリエ