不思議な話(二ーマンのピク詰め)復刻版H

      ー実際に体験した不思議な出来事の記録ですー

274 「タバコ(後)」

彼は別の現場だったのですが、早めに現場が終わったのを良いことに、今までパチンコをしていて何とスッカラカンになったと言うのです。たまたま駅前で私の姿を見かけ、帰りの電車賃を借りようと追いかけてきたらしいのです。


あまりにもガッカリしたので私は笑ってしまいましたが、すぐにその状況の深刻さを笑ってもいられなくなります。事務所に電話をかける10円玉も持っていないのかと言う私の言葉に促されて自分のカバンを隅々まで探す彼が思い出したようにカバンの中から白い封筒を取り出します。

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私が彼のアパートに遊びに行った2日後に例のタバコをプレゼントした中年男性からその封筒を私に渡して欲しいと頼まれたと言うのです。その男性はどうも彼がタバコを買いに来るのをワザワザ待っていたようなのです。

しばらく私と同じ現場にならなかったのでカバンの中に入れたままその封筒を私に渡すチャンスがなく、彼はスッカリその封筒のことを忘れていたようです。その封筒を開けたとき、やはり神様はいるのだと思いました。

その封筒の中には短い感謝の手紙と一緒に一万円札が入っていたからです。

コオロギのアトリエ