283 「赤い傘」
小学3年生頃の話です。雨降りの登校は嫌いではありませんでした。たまに履く雨靴の感触を楽しんだり、新しく買ってもらった傘を自慢するのが嬉しかったりしたからです。
その日は朝から小雨が降っていましたが、学校の近くまで来たときにはほとんど雨は止んでおり、友達同士で傘をぶつけ合ったりしてふざけていたのですが、調子に乗った男の子の1人が女の子の傘に泥を投げつけます。
当時は男の子の傘の色は大体が黒色で女の子はほとんどが赤い傘でした。その赤い傘に付いた茶系の泥がある瞬間から突如として鮮やかなグリーンに変化します。
色彩が変化する視覚的な錯覚を体験したのはその時が初めてでしたのでえらく感動するのですが、その不思議な輝きに包まれた鮮やかなグリーンは少年の色彩に対する好奇心を刺激しその後の人生に大きな影響を与えることになります。
なぜ今頃になってそんなことを思いだしたかと言うと、この間たまたまテレビで見た変身物のヒーローのカラーリングに使われているグリーンの色があの時のグリーンと同じだったからです。
コオロギのアトリエ