288 「サツマイモ」
Tさんはご近所の40代の主婦です。Tさんには素敵なご主人と可愛い高校生の娘さんがいるのですが、ご主人の特殊なファッションセンスには2人ともついて行けないようでした。
その日も親子3人で郊外のショッピングセンターに買い物に行ったそうなのですが、ご主人はどこで手に入れたのか見たことのない微妙な紫色のコートを羽織っていたそうです。Tさんに言わせると『サツマイモの紫色』だったらしいのですが、まるでサツマイモが歩いているようで恥ずかしいということでTさんはご主人とは別々に買い物することを提案します。
買い物の最中にご主人の姿を見かけると娘さんと一緒にご主人からわざと遠ざかるようにしていたらしいのですが、結局先に買い物の終わったご主人に見つかり逃れられなくなるのですが、満面の笑みで近付いてくるご主人のファッションセンスをとてもザンネンに思ったと言います。
私には何故Tさんがそこまで紫色のコートを着ただけのご主人のことをサツマイモのようだとイメージするのかが不思議でならなかったのですが、ご主人のコートの下に着ていたセーターの色を聞いて納得しました。
そのセーターの色というのが焼きたてのおいしそうな焼き芋の黄色だったそうです。
コオロギのアトリエ