不思議な話(二ーマンのピク詰め)復刻版H

      ー実際に体験した不思議な出来事の記録ですー

291 「消去法」

 

去年の夏にナナちゃんと一緒に歩いて40分の河原まで散歩した時のことなのですが、歩き疲れた私は大きな水門の脇にある土手の階段の中ほどに腰を下ろして休憩していました。

ナナちゃんは階段の途中にある広いスペースで走り回るのが好きなので10メートルのリードをフルに伸ばした状態で勝手に遊ばせていたのですが、突然水門の方を覗き込むようにして激しく吠えます。

水門から川まではコンクリートできれいに舗装されたほとんど水が流れていない長さ20メートル幅8メートルほどの人工の川があるのですが、その数センチの水の流れに逆行するように「バシャバシャ」と派手な音を立てながら何者かが水門に向かって移動しているのです。

私はあわてて立ち上がり水門の手スリに駆け寄り急いで水しぶきの音のする方を見たのですが、それはちょうど水門の向こう側に姿を消す所でした。水門の向こう側を確認する為に数10段の土手の階段を登り土手の向こう側を覗き込んだときには生き物の姿は影も形もありませんでした。

                           消去法-s


 

私が見たものは魚でもなければ巨大なカエルでもなかったと断言できるのはそれが直立した2本足の生き物だったからですが、たまたま直立したイタチやアナグマでもないと思ったのはその生き物にはシッポがなかったからです。

野生の猿でもないと思ったのは体毛が生えていなかったからで、人間の子供との決定的な違いはその体長が60センチほどだったのと皮膚の色が黒かったという所です。

頭の先から足の先までツルツルの真っ黒な60センチの直立する人型の生き物が何なのかを私は知りません。

コオロギのアトリエ