不思議な話(二ーマンのピク詰め)復刻版H

      ー実際に体験した不思議な出来事の記録ですー

319 「刀」

小学4年生の頃の話です。土曜日の午後、学校の帰りに両親が共働きの友達のK君の家に遊びに行った時にK君が「いいものを見せてやる」と言って押入れの奥から日本刀を引っ張り出してきます。今思えばかなり錆びも出ていて刃こぼれも目立ってはいたのですが私は生まれて初めて目にする日本刀に完全に魅せられてしまいます。

ただ単に『カッコいい』と思っただけなのでしょうが、どうしてもその日本刀を持って帰りたいという衝動を抑えられなくなります。結局K君を拝み倒して親に内緒で3日間だけ貸してもらえる事になるのですが持って帰るのが一苦労です。

子供心にいけない事だとわかっていたのでズボンの裾から出ないようにズボンの右足の中に隠して隠しきれない部分はセーターの中に隠します。日本刀はほとんど脇の下まで来ていますから体の右側面はガチガチで当然膝も曲がりませんから知らない人が見たらさぞかし不思議な歩き方をする少年に見えたと思います。

刀-s


 

およそ3キロの道のりを普段の3倍の時間をかけてヘトヘトになりながら何とか家までたどり着くのですが、着いた途端に母親から大目玉です。K君の親から既に連絡が入っていたのです。結局、翌日の午前中に父親と一緒に日本刀を返しに行く事になるのですが、寝不足の私は内心ホッとしていました。

実は朝まで私の枕元に置いていた日本刀から一晩中『カタカタカタカタ』という音が聞こえていたからです。どうも私が持って帰ったものは日本刀だけではなく、別なものも一緒に持って帰っていたようです。

コオロギのアトリエ