不思議な話(二ーマンのピク詰め)復刻版H

      ー実際に体験した不思議な出来事の記録ですー

330 「カレー」

福岡で仕事をしている時は単身赴任でしたから夕食は100%外食でした。その内に何軒かの顔馴染みのお店も出来てきて、中でも感じの良いおばちゃんが切り盛りする小さな食堂のカレーがとても美味しくて良く通うようになるのですが、ある日そのおばちゃんに「特別に美味しいカレーを作ったから食べてみて」と言われます。

今までのカレーで十分美味しいのですがいつになく自信たっぷりのおばちゃんにそう言われれば食べるしかありません。実際のところ味のコメントを期待するおばちゃんの期待に添える程の変化は感じられませんでしたが確かに味的にはハイカラな感じになっていたのでそこは大人としておばちゃんを傷つけないようなトークで何とか切り抜けるのですが、カレーを食べている途中で感じた口の中の違和感はクリヤー出来ませんでした。

                    カレー4-s

えらく硬いものが口の中にあるのです。舌で確認した所どうもそれは直径が6ミリ程で長さが3センチ程の螺旋状の金属のようでした。その時すぐに『おばちゃん、カレーの中にこんなのが入っていたよ』と口の中の物を出してしまえば笑っておしまいになっていたのでしょうが、おばちゃんを傷つけてしまうのではなかろうかという一瞬のためらいからタイミングを逸してしまいます。

飲み込んでしまおうかとも思いましたがそこまでの勇気はなかったので結局異物を口の中に入れたままカレーを完食し、口の中の異物に気づかれないように食後の会話をこなしながら会計を済まして店を出るのですが、車のルームライトで確認したそれは缶詰を特殊な器具で開けた時に出る金属の破片のようでした。

角が刃物の様に尖っていましたので口の中は血だらけでしたが、おばちゃんのプライドは傷つけずにすみました。

コオロギのアトリエ