不思議な話(二ーマンのピク詰め)復刻版H

      ー実際に体験した不思議な出来事の記録ですー

346 「火災報知機」

高校2年の時の絵画教室は本校舎から少し離れた高台にある建物の2階で、入り口から入ってすぐの右側の壁に『火災報知機』がありました。その教室に出入りする度にその少し壁から盛り上がった直径25センチ程の真っ赤な円形の中心にある直径4センチ程の透明なプラスティックに防護されたその奥の小さな黒いボタンが気になってしょうがありませんでした。

ある日の放課後その教室で描きかけの絵を描いる時に火災報知機のプラスティックの表面に白い文字で書かれた『強く押す』の『強く』とはどのくらいの強さなのかが気になって気になって仕方がなくなります。『強く』なのだから軽く触れる分には問題なかろうとプラスティックの表面に人差し指で触れてみます。

実際に押してみたいのは山々でしたが、そこは何とか理性で踏み止まり心の中で指先に『グッ』と力を込めたイメージをするだけで我慢をしたのですが、何とその瞬間プラスティックのカバーが外れカバーが内側の黒いボタンを押してしまったのです。

                 火災報知機-s

けたたましく鳴り響くベルの音に驚いた教室に居た数人のクラスメートは私が火災報知機のボタンを押したと騒ぎ出すのですが、その時私の人差し指は確かにカバーの外側にあったのです。自分でも信じられないのですからそんなことを言っても誰も信じてくれるわけがありません。

たまたま学校の隣が消防署なものですから消防車が駆けつけるのに3分とかからなかったのですが、消防署の人と担任が血相を変えて部屋に入って来たのはほとんど同時でした。

『確かにカバーには触れたけれど心の中で押しただけで実際には自分は押していない』などという弁解は通用しない位はわかっていましたから『描きかけのキャンバスを移動させようとしてあやまってキャンバスの角を報知機のスイッチにぶつけてしまった』ととっさに嘘をついてしまったのですがクラスメートも話を合わせてくれその場は何とか切り抜ける事が出来ました。

それ以降、いろんなところで非常ベルを発見する度に意識的に目をそらす様になり、決してスイッチを押すイメージだけはしないようにしているのです。

コオロギのアトリエ