不思議な話(二ーマンのピク詰め)復刻版H

      ー実際に体験した不思議な出来事の記録ですー

349 「砂糖」

その小さな港で釣りをするのは3年ぶりでした。その港を敬遠するのはあまり釣れたためしがないのとテトラポットが多過ぎて夜釣りには向いていないからなのですが、その日その港を選んだのは釣り仲間から最近大型のスズキが上がったと聞いたからです。

『く』の字に折れ曲がった防波堤の先端にある小さな白い灯台から更に海にせり出したテトラの突端がスズキのポイントなのですが、何だか様子がおかしいのです。夕方の6時から竿を出して3時間を過ぎても全く当たりがありませんし、港だというのに一隻の船も出入りしないのです。

それどころか平日だというのに港に来てから人っ子一人見かけていないのです。何だか気持ちが悪くなってきたので気晴らしに灯台の所に行ってみて更に気持ち悪くなります。来た時には気がつかなかったのですが灯台の足下に2か所に分けて盛り塩がされていたのです。

                砂糖-s

それも普通の大きさではなく直径が20センチ程の巨大な盛り塩です。その時私がそれを舐めてみようと思ったのはそれが塩ではないと思ったからなのですが、案の定、それは砂糖でした。

だからと言って何かが解決したわけではなく、逆に暴走した想像力は盛り塩、いや盛り砂糖の大きさから連想する巨大な何かに恐怖を感じ逃げるように港を後にするのですが、そもそも恐怖とはそういうもので想像力が逞しければ逞しいほど恐怖は大きくなるようです。

その意味がわかればきっと何でもない事なのでしょうけれど…

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