不思議な話(二ーマンのピク詰め)復刻版H

      ー実際に体験した不思議な出来事の記録ですー

370 「針の穴」

生活をしていく上で当たり前のことはわざわざ『当たり前だ』などと意識することはありません。喉が渇けばコップに水を注ぎそれを飲むわけですが、コップに水を注ぐ時に『水はチャンとコップの中に納まってくれるのだろうか』などとは考えません。

ところが何かの拍子に今まで当たり前だと思っていたことが当たり前ではなくなる事があります。この間、画家のYさんのアトリエで連休を利用して東京から戻っておられたYさんの妹さんとお話をしている時にたまたまその話になりました。Yさんの妹さんの体験はこうです。

旦那さんのズボンの裾上げをしようといつものように裁縫箱を出し、針に糸を通して普通に縫い始めるのですが針が布を貫通した時に針から糸が外れてしまいます。最初は糸の端が針から外れてしまったのだろうと別に気にもせずに針の穴に糸を通す所からやり直すのですが、何度やっても針が布を貫通した時に針から糸が外れてしまうのだそうです。

                 針の穴-s

不思議なのは布から出た糸は『U』の字の状態で糸の端は両方とも布の裏側にあるままだと言うのです。妹さんは針の穴に亀裂でもあるのかと思い確認するのですが何の問題もなかったそうです。その針に糸を通し目の前で何度も糸を引っ張ってみても糸は針から外れることはないのですが、ズボンの布を貫通すると糸は針から外れたのだそうです。

妹さんは「これは裾上げをするなと言うことなのだろう」と思い裾上げをやめたそうです。意味はわかりませんがこの妹さんの判断は正解のような気がします。自分も経験上、通常のことが通常ではなくなりそれが連続する時はとりあえず何らかの警告なのだと考えるようにしているのです。

コオロギのアトリエ