不思議な話(二ーマンのピク詰め)復刻版H

      ー実際に体験した不思議な出来事の記録ですー

379 「黄色い蝶」

別々の出来事がいくつもの偶然によって一つに繋がった時、それまで漠然と感じていたメッセージのようなものをメッセージとして確信する瞬間があります。画家のNさんは展覧会の準備で忙しいさなかに最愛の母親を亡くし、哀しみの中での制作を余儀なくされます。

初七日も無事に済んだ頃、沈んだ気持ちのまま大作を制作していると、真冬だというのにアトリエの中に黄色い蝶が入って来てその制作中のキャンバスにとまったそうです。結局その黄色い蝶はその作品が完成するまでそこにジッとしていたらしいのですが、Nさんはその蝶はきっと母親で、自分を見守ってくれているのだと思ったそうです。


それだけなら世間で良くあるステキなお話で終わるのですが。それは1年以上経ったNさんの個展会場で起こります。私は最終日に伺い会場の片づけを手伝わせてもらったのですが、その時にNさんから名刺をいただきます。

                   黄色い蝶-s

その名詞は画家のTさんにパソコンで作ってもらったものらしいのですが、例の思い出の黄色い蝶がとまった作品の写真がレイアウトされた素敵な名詞でしたがTさんのミスで作品の写真は上下が逆になっていました。抽象的な作品でしたのでNさんはそれはそれで気に入っているようでしたが、良く見ると画像が反転しているのです。

それまで誰も気が付かなかったのですが画像が裏返しなのです。そのことをTさんに確認すると画像の上下が逆になることはあっても画像が裏返しになることはあり得ないと言います。後日その名刺を作り直したTさんがその画像をそのまま反転させて前の画像と何気なく並べてみて驚きます。何と淡い抽象的なグリーンの画面のほぼ中央に黄色い蝶がとまっているように見えたと言います。

TさんはNさんと黄色い蝶の関係は知らずにその面白い画像をNさんに見せるのですが、その画像を見せられたNさんは母親から見守られている事を確信したそうです。偶然と言えばそれまでですが、いくつもの偶然が重ならなければその現象が起こらなかったのも事実です。

私もその画像を見せてもらったのですが、まるでそこに黄色い蝶がとまっているかのような見事な蝶でした。Nさんと黄色い蝶のシンクロはこれからも続きそうな気がします。

コオロギのアトリエ