不思議な話(二ーマンのピク詰め)復刻版H

      ー実際に体験した不思議な出来事の記録ですー

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あのRさんが若い頃に体験した不思議な話です。20代のRさんが若さに任せて九州圏内を無銭旅行するのですが、ある時、宮崎県辺りの山に登ってみたそうです。登ったと言うよりも迷い込んだと言った方が正しいのですが、昼過ぎに山に入って夕方になっても山を降りる事が出来なかったそうです。

俗に言う遭難です。季節も2月の一番寒い時期でそのうち雪も降りだします。夜中の2時頃まで真っ暗な山の中を歩き回るのですが一向に山から出る事は出来ません。体力も限界に達し「自分はここで凍死するかも知れない」と思い始めた頃に少し開けた場所に出ます。

それは細い林道らしく、とりあえず麓であろうと思われる方向に歩くのですがそのうち寒さと疲労で意識が遠くなってきます。もう限界だと思っている所に何と奇跡的に道の真ん中に止まっている自動車を見つけたというのです。

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それは林道には不釣り合いな大きさの白い自動車だというのは暗闇の中でもわかったそうです。その時のRさんにはそんなことはどうでも良いことで、車の中に人が居ようが居まいがそんなことも関係なく鍵のかかっていない車の後部座席ドアから勝手に車内に入り後ろのシートで寝たそうです。

夜明けを待って麓の町に戻る事が出来、命拾いをするのですが結局その外車の所有者は朝になっても現れなかったそうです。とりあえず後で礼をするためにナンバーを控えるのですが、そのナンバーは『00‐00』だったと言います。

普通、車のナンバーが『0』からは始まることなどないと思うのですが…

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