不思議な話(二ーマンのピク詰め)復刻版H

      ー実際に体験した不思議な出来事の記録ですー

397 「螺旋」

Eさんとは昔からの知り合いなので、彼の気まじめさや誠実さは私が一番良く知っています。彼はほとんど冗談を言いませんし、まず嘘はつかない人です。というか性格的に嘘はつけない人です。そんなEさんが一度だけ私に妙な話を聞かせてくれた事があります。

彼はそれがあまりにも非現実的な事なので今まで誰にもその話はしなかったそうです。何故そんな話を私にしたのかはわかりませんが、おそらく私ならその話をまともに聞いてくれると思ったのでしょう。Eさんから聞いた話はこんな話です。

Eさんが小学生の高学年の頃、友達数人と近所の空き地で遊んでいたそうです。その空き地の周りは草むらになっており、Eさん達はたまたま草むらの側で遊びに興じていました。それは突然草むらから現れたそうです。幅が30センチ位で直径が15センチ位のコイル状の黒い物が草むらから転がり出てきてEさんの足下で止まります。

                      螺旋-s

Eさんは最初それを『バネ』だと思ったそうですが、小指ほどの太さの渦巻きは金属ではなく生き物のそれだったと言います。何故それを生き物だと思ったかと言うと、蛇のような光沢のそれをむやみに踏みつけたりすれば噛みつかれるのではなかろうかと言う恐怖心が湧いたからだと言います。

外見上は頭やシッポは見当たらなかったと言いますが、その渦巻きが草むらから出てきた時よりも速いスピードで転がりながら草むらに戻って行くのを見て、それは間違いなく意思を持った生き物だと確信したそうです。草むらの中でしばらく「ガサガサ」と音が聞こえたと言いますから、風や何かでたまたま転がったものではないようです。

私はその話を聞きながら『螺旋』という形状に逆にリアリティーを感じました。作り話ならわざわざ螺旋状などにしなくてももっと気のきいた形体は幾らでもあるのです。それがどんなに意味不明な説明不可能な物でもEさんが何かを見てしまったのは事実のようです。

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