不思議な話(二ーマンのピク詰め)復刻版H

      ー実際に体験した不思議な出来事の記録ですー

094 「デジャヴ」

 福岡で造形の仕事をしているときの出来事です。ある大手のテーマパーク関連のキャラクターの製作をしたことがあるのですが、原型(粘土で製作された状態)の最終段階でクライアントの検査員がわざわざアメリカから見に来るということになりました。

それに合格しなければ次の工程に進めませんし、そこでOKをもらわなければ確実に納期に遅れることになるのです。社長を始め従業員たちの無言のプレッシャーの中、検査員の到着前日に数体のキャラクターの原型を完成させたのですが、その夜は検査の結果が心配で眠れませんでした。明け方少し眠ったようですが、その時にこんな夢を見ます。


工場の原形室の作業台を多くの人が取り囲んでいて、その中に年の頃なら40代半ばのおしゃれなアメリカ人がいます。胸元の赤いハンカチが印象的なそのアメリカ人はしばらく原型を見た後、私に向かってこう言います。

「この原型の責任者は君か?実にすばらしい、完璧だ」

ニコニコしながらそう言う彼と握手をしている所で目が覚めるのですが、
それは自分の希望であり、現実はそんなに甘くないこともわかっていました。


当日検査員が来たのは昼休みを終えた直後でした。4~5人の人を引き連れ、胸元から赤いハンカチを取り出して仕切りと口元をぬぐう40代半ばのおしゃれなアメリカ人は何と夢で見たその人で、原形室の作業台を大勢の人が取り囲んだ状況は夢で見たのと寸分の違いもありませんでした。

でじゃぶ-s



私は検査の結果よりその状況がデジャヴであることの方に気を取られてしまい、通訳の女性が『完璧です。何の問題もありません。そうおっしゃっています』というのをうわの空で聞いていました。赤いハンカチの彼に握手を求められてやっと我に返るのです。

今までいろんな体験をしてそれらを総合して思うのですが、もしかしたら物事というのはすでに定まった状態でそこにあり、時間は過去から未来にではなく、川の流れのように未来から過去へ流れているのではないでしょうか。

その流れの中で進んでいると錯覚しているのはロールプレイングゲームの主人公ように自分の周りが流れているからで、予知やデジャヴは既に存在する未来の結果が何らかの形で過去(今)の自分に作用しているだけなのではないでしょうか。

コオロギのアトリエ