不思議な話(二ーマンのピク詰め)復刻版H

      ー実際に体験した不思議な出来事の記録ですー

143 「約束」

東京時代にバイト仲間のアパートに遊びに行ったときのことです。バイトの先輩の立場としてはプライベートでも出来るだけ新人とのコミュニケーションを図ることが大切だと考えていましたから、その日のバイトを終えて新宿辺りをブラブラした後、食事をして中野にある彼のアパートにおじゃまします。

近所のコンビニで買ったビールとつまみで適当に飲んだり食ったりしながらそれなりに盛り上がるのですが、あまり興味のない音楽のレコードを聴かされたり自慢のギターの話にも飽きてきたので、そろそろ帰ると言うと今日は泊まっていけと言います。

私のアパートは高円寺でしたから歩いてもそれ程かからない距離ではありましたが、親睦を深める為にお付き合いすることにしました。布団を敷く段になって、テーブルや何かを片付けるのが彼の仕事だったので私が押入れの布団を出すことになりました。

押入れを開けて上の段の布団を確認したとき、別なものも確認してしまいました。布団の上にうずくまった女が顔だけこちらに向けてニッコリ微笑んでいるのです。私は悲鳴を上げたのですが声は出ませんでした。

           yakusoku-s

押入れを覗き込んダ彼も「ウオォォォ…」という雄叫びとともに押入れから飛び退くのですが、その彼を追いかけるように押入れから女が飛び出してきたではありませんか。四畳半はパニックニになりましたが、しばらくして混乱が治まると彼は申し訳なさそうに説明をしてくれました。

彼が言うには、バイトが終わりに彼女とデートの約束をしていたのをスッカリ忘れていたようです。彼女は彼女でアパートに帰って来る彼を驚かそうと押入れに隠れて待っているうちに寝てしまったようです。目が覚めたときには私が居たので押入れから出るに出られなくなり私が帰るのを押入れの中でジッと待っていたらしいのです。

勿論早々に退散させていただきました。

コオロギのアトリエ