不思議な話(二ーマンのピク詰め)復刻版H

      ー実際に体験した不思議な出来事の記録ですー

159 「奇跡」

釣りをしていて一番怖かったのは津波に遭遇したときです。その一級河川が海に流れ込む河口には海に突き出した幅4メートル程の道路のような防波堤があり、距離にしたら1キロメートル位でしょうか、足場も良く車で先端まで行くことができるうえに海面との距離が約1メートル程なので釣り場としては最高の釣り場でした。

ただし大潮の満潮時には先端の数十メートルは海水に浸かることがあります。
浸かると言っても波がコンクリートの表面をぬらす程度なので特に気にすることもなく、その日も防波堤の先端でスズキを狙っていました。

その日も大潮で夜中の12時近くに満潮になるのですが、その頃から入れ食い状態になり波が防波堤の表面を濡らす頃には丁度大物とのやり取りの真っ最中でいつもより海水の量が多い事など、その時はあまり気になりませんでした。

70センチ位のスズキを釣り上げて感動しているときに初めて海面の異常に気づきます。今まで足元を濡らしていた海水がどこにもないのです。見ると海面が50~60センチほど下がっているではありませんか。

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嫌な予感がした時には既に手遅れでした。見る見る海面が競り上がって来て、あっという間に防波堤の表面は水浸しになり、その辺に置きっぱなしの釣り道具は波にさらわれてクーラーから釣り竿から何にもなくなります。海水も20センチ以上になり尚も水位は増しています。

恐怖で足がすくんだのではなく、打ち寄せる波の威力に足を動かせなかったのです。当時は『ミゼットⅡ』という小さな車に乗っていたのですが、その車の後部が波に押されて少し動いているのを見たときには生きた心地がしませんでした。とりあえず車には乗り込んだのですが…
つづく

コオロギのアトリエ