199 「消滅」
5歳くらいのときの話です。午後の4時くらいに居間の壁に持たれてテレビを見ていたのですが、番組が終わりテレビを消すと何やら表が騒がしいのです。
何だろうと思い外に出てみると突然誰かに後頭部を思い切り引っ叩かれました。それは母親でした。母親は驚いている私に向かってこんなことを言いました。
「何処に行っていたの?」
私には何のことかさっぱりわかりません。私は居間でテレビを見ていたのです。駆け寄ってきたお隣のおばあちゃんなどはほとんど泣きながら私を抱きしめます。母親は裏山や小川の向こうにいる4~5人の大人達に向かって叫んでいました。
「居たよ!すみません、居ましたから…」
その後、私は母親にこっぴどく叱られるのですが意味がわからないのです。居間でテレビを見ていたと言っても信じてはもらえないのです。母親に言わせると家の何処にも私の姿はなかったと言うのです。
私は今でもあれは母親の勘違いだと思っていますが、もしかしたら例の突然ものが消滅してしまう現象が人のレベルで起こってしまったのかも知れません。
コオロギのアトリエ