不思議な話(二ーマンのピク詰め)復刻版H

      ー実際に体験した不思議な出来事の記録ですー

232 「モンスター(後)」

素手で捕まえることなどは最初から考えてはいませんからとりあえずバケツを被せて様子を見るのですがその大きさから手足がバケツからはみ出してしまいます。

更にはバケツごと移動し始めるものですからバケツを押さえつけ、嫁に下敷きの代わりになる物を持ってこさせバケツの下に上手く滑り込ませた後一気にひっくり返します。その時、この生き物は『巨大なヤドカリ』なのではなかろうかと思ったのですが、それとほとんど同時に嫁が叫びました。

「これ、ヤシガニじゃない?」

それはヤシガニに間違いありませんでした。誰かが飼っていたペットが逃げ出したのです。朝を待って重石を乗せたバケツの中で一晩我慢してもらったヤシガニを持って3階の各部屋を周るのですが不思議なことに飼い主が現れませんでした。

                     モンスター、2-s

今思えば上の階や下の階も調べるべきでした。なぜならヤシガニは平気でヤシの木を登ることが出来るのですからそのアパートの誰が飼っていても私の部屋までやって来ることは可能なのです。もしかしたらアパート以外からやって来たとも考えられます。

結局飼い主を見つける事が出来ず仕方がないので動物好きの妹に引き取ってもらう事になるのですが、妹の話によるとその日のうちにヤシガニは脱走してしまったと言うことでした。ところが何日かして妹の家に行ったとき、妹の子供の言葉に私は耳を疑いました。

「おいちゃん、この間はどうもごちそうさまでした」

コオロギのアトリエ