258 「数珠」
勘違いはよくあることですが、私の場合、生活の中での普通の行動を間違えてしまうことなどは日常茶飯事です。冷やし中華の麺にフーフーと息を吹きかけていたり、お風呂場の掃除のときなどは必ずと言って良いほどカランとシャワーの切り替えを確認した挙句に頭からシャワーを浴びてしまいます。ところが中には勘違いでは済まされないチョッと不思議なこともあります。たとえば最近こんなことがありました。
嫁方の墓参りにお供したときのことです。嫁のご先祖はお墓ではなくお寺の本堂の中にある納骨堂です。本堂のメインの大きな仏壇にお参りした後、数メートル離れたその部屋にある自分のご先祖の仏壇をお参りするのですが、仏壇の前で急に嫁が慌てだすのでどうしたのかと尋ねると、今まで手に持っていた『数珠』がなくなったと言うのです。
本堂に忘れてきたのではないのかと探しの戻るのですがありません。途中で落とすと言ってもほんの数メートルですから見つからないわけがありません。バックの中にしまったのではないかと言う私の意見を否定しながら絶対にそんなことはないと言いつつバックのホックをはずし、内側のポケットのチャックを開け、数珠を入れていた布のケースを取り出した嫁は思わず奇声を発します。
「うっそー、信じられなーい」
私も信じられませんでした。その距離を移動中にその状態で数珠をバッグにしまうのはまず不可能だったからです。
コオロギのアトリエ