287 「濡れ衣」
中学1年の数学の授業中の話です。授業中に突然先生に怒られたことがあります。黒板に向かって難しい公式をチョークで書いていたS先生が突然私の方に向き直り、「もう一度言ってみろ」と言うのです。
あまりにも突然でビックリしている私に向かってすごい剣幕で更に大きな声をあげるのですが、何に対して怒っているのかがわかりませんでした。怒りの内容を聞いていると、どうも人の外見を笑うのは人として最低だというような内容のようでした。
私としては全く心当たりがありませんし、それどころかクラスの中で誰一人として無駄話をしていた生徒はいないのです。それなのに何故か私限定で叱られているのです。何が何だかわからないまま授業終了のチャイムで何とか救われるのですが、全く持って意味がわかりませんでした。
そんな私の気持ちを察して休み時間にクラスの友達は私に同情してくれるのですが、友達に慰められながら私はあることが気になっていました。実はS先生が黒板に向かっているとき、S先生のかなり淋しくなった後頭部の状態を見ながら『あそこに目と口を描いたら相当笑えるだろうな』と考えていたのです。
でもそれは考えただけで絶対に声にはしていないのですが…
コオロギのアトリエ