不思議な話(二ーマンのピク詰め)復刻版H

      ー実際に体験した不思議な出来事の記録ですー

100 「防空壕」

 防空壕(ぼうくうごう)と言うのは戦時中、空襲から身を守るために一時的に非難する洞穴のことですが、最近ではほとんど見かけることはありません。私が子供の頃は自宅の裏山に防空壕跡があったのですが、それは々巨大な防空壕で大型のダンプカーでも楽に通れるほどでした。

戦時中は戦闘機の格納庫が近くにあったらしいのでおそらくその関係かと思われますが、山全体が巨大な防空壕になっていてその距離は数キロにも及び、しかも迷路のように入り組んだ造りになっていました。

勿論立ち入り禁止にはなっているのですが好奇心旺盛な子供たちが放っておくはずがありません。暇さえあればロウソク(当時は懐中電灯よりもロウソクの方が主流でした)をもって集まります。探検しながら防空壕の全体の様子を地図にするのですが、毎回新しい横穴や見逃してしまう位の小さな抜け道の発見があり、結構楽しむことが出来ました。

防空壕-s



落盤や何かで結局小学校の6年生のときに完全に立ち入りが禁止になるのですが、その頃にはほぼ完璧に全体の構造を把握できていました。しかし一箇所だけどうしても腑に落ちない場所があり、地図を広げて皆で確認しあうのですが、何故か皆それぞれに違うことを言うのです。

それは子供一人が腰をかがめてやっと通れるくらいの小さな横穴なのですが、ある者は行き止まりだったと言い、ある者は途中で二手に別れていると言い、ある者は突き当りが広い空間になっていたと言います。

実は私の記憶ではその細い横穴は防空壕の外まで続いていて、出口には古い火葬場があったと記憶しているのです。それを確認する為にその後も何度か皆で入ったことがあるのですがどうしてもその横穴を発見することは出来ませんでした。

おそらくは落盤で埋まってしまったのでしょうが、もしかするとその横穴は他の場所よりも酸素が薄くなっていて、それが原因で皆の記憶が曖昧になってしまったのかもしれません。

コオロギのアトリエ