不思議な話(二ーマンのピク詰め)復刻版H

      ー実際に体験した不思議な出来事の記録ですー

212 「電話」

昔は電話と言えばダイヤル式の『黒電話』のことでした。最近の若い人にはピンと来ないと思いますが、電話をかけるときは数字の上のプレートに開いた穴に指を差し込んで決められた位置まで回していたのです。当時は電話機を携帯出来る時代が来るなどとは夢にも思いませんでした。

その黒電話ですが注意して耳を凝らしていると電話のベルが鳴る前に「コトッ」という音がする時がありました。ですから上手くするとベルが鳴る前に受話器を取ることが出来たのです。

造形の仕事を始めた頃はかなり暇でしたのでその遊びに命をかけていたのですが、あるとき例の「コトッ」が聞こえたので速攻で受話器を取ると受話器の向こうでダイヤルを回す音と聞きなれた声が聞こえます。

『…兄ちゃんとこの電話番号の最後の数字、何だっけ?いや、自宅じゃなくて仕事場の方…』

それは妹の声でした。どうも母親と会話をしているらしく遠くの方で母親が私の仕事場の電話番号を叫んでいました。おそらく状況としては妹が受話器を耳に当てたまま私に電話をかけようとしている所らしいのです。

                                             でんわ-s

しかし既に電話はつながっている訳で、しかたがありませんので「もしもし?兄ですが…」と言うと電話の向こうで悲鳴が聞こえます。悲鳴の後に「ガン、ゴン」と聞こえたのはビックリして受話器を放り出したからだと思われました。

その後はその不思議な出来事についてあーでもないこーでもないと盛り上がるのですが、何故電話がつながったのかは未だに謎です。

コオロギのアトリエ