不思議な話(二ーマンのピク詰め)復刻版H

      ー実際に体験した不思議な出来事の記録ですー

228 「夜釣り」

かれこれ15年前の話です。当時の釣り仲間のEさんに誘われて夕方から夜釣りに出かけるのですが、小さな漁村の港から石ころだらけの海岸を崖に沿って15分ほど歩いた足場の悪い岩場がその日の釣り場でした。 

 


Eさんの情報によると1メートル級の巨大スズキが釣れるとの事でしたが夜中の11時まで頑張って結局釣れたのは15センチの『ベラ』と小さな『ホゴ』の2匹だけでした。釣果には納得できませんでしたがいつもの事ですのでそれほどショックはありませんでした。

ただ真っ暗闇の石ころだらけの波打ち際を引き返すのがチョッと億劫なだけだったのですが、それも途中で見かけた鮮やかな黄色のゴムマリのお蔭で味気ない波打ち際もそれなりに退屈せずに引き返すことが出来ました。もうすぐ港に着くという所で後を歩いていたEさんが突然こんなことを言います。

「こんな所で遊んでいると危ないよ」

海岸には私とEさんの2人しかいませんから私の聞き違いかと思いEさんの方に向き直ると、Eさんは海の方にライトを向けたまま更にこう言うのです。

「子供がこんな時間まで遊んでいたらダメだよ。早く帰りなさい」

                   ごむまり-s

子供が居るのだと思いライトに照らされた石ころだらけ波打ち際に目を凝らしてみるのですがそこには誰もいないのです。Eさんの悪い冗談かと思い、私が「やめてくださいよ」というと「いや、そこに女の子が…」と言いながらしばらくライトでその辺を照らすのですがそこに人影などありません。

突然Eさんが駆け出すものですから私もとりあえず全速で港まで走るしかありませんでしたが、帰りの車の中で詳しく聞いてみるとEさんは波打ち際でボール遊びをする赤いスカートの小さな女の子を見たらしいのです。

それがEさんの見間違いか冗談かはわかりませんでしたが、その後2度とその釣り場に行くことはありませんでした。ちなみに女の子の持っていたボールの色は『黄色』だったそうです。

コオロギのアトリエ