不思議な話(二ーマンのピク詰め)復刻版H

      ー実際に体験した不思議な出来事の記録ですー

230 「ドラム」

新婚当時はマンションとまでは行かないまでも高級なアパートみたいな所に住んでいたのですが、いつの頃からか夜中になると近所からドラムの音が聞こえてくるようになりました。

最初のうちは耳を澄まさなければ聞き取れないくらいの音だったのですが日をおうごとにその音は大きくなってきます。3階の部屋のベランダから音のする方向を確認すると、どうも駐車場の向こう側の民家から聞こえてくるようでした。

余り上手ではないのでおそらく趣味でドラムをたたいていると思われたのですが、それにしても余りにもしつこ過ぎるのです。ひどい時には明け方近くまでドラムをたたいている事もあるのです。不思議なことにアパートの住人は誰も文句を言う気配がありませんので私も4,5日我慢をしたのですが、ある蒸し暑い夜中に我慢の限界に達します。

                どらむ-s

今日こそは文句を言ってやろうと夜中の1時過ぎに駐車場の端にある民家の前まで行くのですが、音の出所が思っていた位置と少しずれているのです。音は民家からではなく駐車場の隅にある給水塔から聞こえてくるのです。

どうも給水塔のパイプの中を水が通るときの音をドラムの音と聞き違えていたようです。不思議なもので原因がハッキリするとその音は全然気にならなくなりました。結局私は『音』にではなく勝手に作り上げた真夜中の非常識なドラマーに腹を立てていただけだったのでした。

コオロギのアトリエ