不思議な話(二ーマンのピク詰め)復刻版H

      ー実際に体験した不思議な出来事の記録ですー

246 「共通点ー2」

10年ほど前の暑い夏の夜のことです。仲間と散策中に偶然見つけたその居酒屋はポップな感じがとてもオシャレな居酒屋で、別府の繁華街から少し外れた所にありした。

喉が渇いたという2人の連れは居酒屋に入って適当な飲み物を注文し、お酒の飲めない私の為にラムネを注文してくれるのですが、あいにく店内は満員で仕方なく居酒屋の外に設置された気の利いた長椅子で仲良く3人並んで飲むことになりました。

我々の前には小さなテーブルとコンクリートで舗装されたチョッとしたスペースがあり、その向こうに民家があったのですが民家の玄関が見当たらない所を見るとそれは家の裏側で、正面に見える小さな格子の窓はどうもトイレの窓のようでした。

別にシチュエーションにこだわる程のデリケートな感性は持ち合わせていませんし、どちらかと言えば飲めれば良いという人達なのでそれなりに楽しくその状況を楽しんでいたのですが、ふとした瞬間にある違和感を覚えます。特別な照明などないはずなのに目の前のスペースと正面の民家の壁が淡い光に照らされているのです。

気がつくと空気が凍りついたように全くの無風で、騒がしいはずの音もどこか遠くに聞こえています。同じような状況を何処かで経験したことがあるぞと思っている私に連れの一人がボソッとこう言います。

「おい、トイレの窓、見てみろよ」

                  toire-s

ラムネを喉に流し込むタイミングで正面の小さな窓に目をやると窓の格子の隙間から人の手が出ているのです。最初はその家の人がイタズラ半分でそうしているのだろうと思って見ていたのですが、その肌の異常な白さと、ほとんど肘の部分までが窓から力なく垂れ下がるそのビジョンは到底普通ではありませんでした。

何故なら、その格子の幅は人が腕を出せる幅ではなかったのです。「席、開きましたけど…」という店員さんの声に振り向いたと同時にいつもの見慣れた空気に戻るのですが、もう一度見た格子の窓にそれはありませんでした。

コオロギのアトリエ