347 「裏返し」

妹の子供がまだ３歳か４歳の頃の話です。その子はテレビのコマーシャルを真似るのが大好きな子で、特に気に入っていたのが『オテテのシワとシワをあわせてシ、ア、ワ、セ』というＣＭだったのですが、そのＣＭが始まるとその子もテレビの女の子を真似て同じように手を合わせていました。

当時は結構頻繁に流れていたＣＭでしたから途中で飽きてきたのでしょう、ある時、手を合わせる場面で手のひらではなく手の甲の方を合わせたのです。やってみるとわかりますが（やらない方が良いです）とても気持ちが悪いのです。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

その気持ち悪さはビジュアル的なものだけではなくメンタルな領域にジワジワ浸透して来る恐怖のような何とも言えない気持ち悪さなのです。その瞬間そばに居た私の母が妹の子の頭を思い切り張り飛ばします。それはそれで怖かったのですが、その時、母が言った言葉にチョット感動しました。

「手のシワとシワを合わせて『しあわせ』なんや、手の節と節を合わせたら『ふしあわせ』やろ！」

なるほど、合わせた手を裏返すと指の関節が合わさりフシとフシが合わさった状態になるのです。しかし私が感じた嫌な感じはそれとは別の何かだったのですがそれが何かはわかりません。

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