361 「カマイタチ」
人と話をしている時に全く意識をしていないのに突然確信に触れてしまう事がありますが、そんな時は相手よりも自分の方がビックリしてしまいます。
ある時あのKさんと食事中に『カマイタチ』の話になります。Kさんは小さな竜巻が真空状態を作りそれが皮膚を切り裂くのを昔の人は鎌を持ったイタチの妖怪の仕業にしたのだと言います。その時私はなぜかこんな事を口にしていました。
「もしかしたら元々は『神』の『太刀』だったんじゃないですかね。アイヌ語で神はカムイでしょ?カムイ・タチがいつのまにか『鎌イタチ』になったんですよ」
ほとんど反射的に反論したものですから自分でもビックリしましたがKさんも驚いていました。しばしの沈黙の後、Kさんは言います。
「なるほどね、おそらく間違いないだろうね。神の刀か…」
感心したようにうなずくKさんはもうカマイタチの仕組みなどどうでも良いようでした。そしてチョット良い気分でいる私にKさんは言ってはならない事を言うのです。
「ところでカムイはアイヌ語なのに何故『刀』はアイヌ語ではないのかね、確かアイヌ語で刀は『トミ』じゃなかったかねぇ?」
Kさんは空気を読めない人でした。
コオロギのアトリエ