不思議な話(二ーマンのピク詰め)復刻版H

      ー実際に体験した不思議な出来事の記録ですー

388 「見え方」

若い頃の話です。自分の見ている色は他の人が見ている色と同じなのだろうかという疑問が湧き、友人に頼んである風景をほぼ同じ位置から感情を無視して目に見えるそのままの色彩を忠実に再現するという条件で絵を描いてみたことがあるのですが、その方法では思ったような結果が得られないということで画集の印刷された絵画を模写することになります。

結局、対象に違った色を見ていたとしてもその色を再現する為にチョイスした絵具もその色に見えているので、おそらくお互いに違う色を見ていたとしてもそれを証明できないという結論に至るのですが、本当の問題はそこではありませんでした。

                  見え方-s

最初に描いた2枚の風景画は近所の河原を描いた油絵なのですが彼の絵の中に人物が1人描かれていたのです。制作中はお互いにそれぞれの作品は意識して見ないようにしていましたから途中で気づく事がなかったのですが、彼は女の人が川の側に立っていたと言うのです。

制作時間は2時間程でしたが私が2時間も同じ所にジッとしている人を見逃すわけがありません。河原には誰もいなかったのです。色がどうだのこうだの言う前に、そもそも見えている物が違っていたのです。

コオロギのアトリエ