不思議な話(二ーマンのピク詰め)復刻版H

      ー実際に体験した不思議な出来事の記録ですー

074 「タラバガニ」

 その造形の会社に入社したその日に巨大な造形物の内部の作業の補助をする仕事を命じられたのですが、私は中に入れてもらえず造形物の入り口で中の作業員と外の作業員の仲介のようなことをさせられました。

まだ仕事の内容が良くわかりませんからジタバタするばかりでした。「ペンチを持って来い」とか「溶接棒を持って来い」くらいは何とかなったのですが、どうしてもわからないことがありました。奥の作業員の一人が「タラバガニ」と言っているのです。正確には「タラバガニィー」です。

私は何度も聞き返したのですが、何度聞いても「タラバガニィー」としか聞こえないのです。その内、中にいる全員が「タラバガニ」と言い出すものですからキモチ悪くなって外の作業員の人に聞いて回るのですが誰もわからないのです。

 

その内、中の人達が怒りはじめたものですから仕方なく、出来るだけイントネーションと発音を忠実に再現して工場全体に聞こえるように大声で叫びました。

 



「タラバガニィー…タラバガニィー」

 

するとどうでしょう、どこからともなく従業員の一人が「あいよ!」と軽い乗りで何かを持ってきてくれたのです。金属の板のようなものでしたが、それを中の人に渡すと何事も無かったように作業が再開されるのです。

その業種独特の呼び名や道具があるのでしょうが、未だに「タラバガニ」が何だったのかわかりません。


コオロギのアトリエ