不思議な話(二ーマンのピク詰め)復刻版H

      ー実際に体験した不思議な出来事の記録ですー

090 「ヘルメット」

 初めて原付のバイクを買ったのが嬉しくてたまらなかった頃の話です。当時は新品のバイクに乗るのが楽しくてほとんど毎日のように乗り回していました。

そんなある日の午後、少し離れた本屋までバイクを走らせ店内で適当に時間をつぶしていると、本屋のすぐ前の通りで「ガッシャーン」という大きな音が聞こえたので表に出てみると乗用車とバイクの事故のようでした。

遠巻きに事故現場を確認するとバイクの運転手はかなりのダメージがあるらしく、周りを取り囲んだ人達の呼びかけに全く反応していませんでした。しばらく様子を伺いましたが救急車も到着したこともあって、私は事故の恐ろしさを痛感しながら店の前に停めた自分のバイクに戻ったのですが、何かいつもと様子が違うのです。

ヘルメット-s


それに気づくまで15秒くらいかかってしまったのはそれを信じたくなかったからだと思います。いつもヘルメットはバックミラーに引っ掛けたままバイクを離れるのですが、その新品であるはずのヘルメットが新品ではないのです。

薄汚れた傷だらけのヘルメットに変わっているのです。誰かが盗んだと言うか交換していったようです。

しばらくはショックから立ち直れませんでしたがとりあえずバイクを運転して帰らなければなりませんから、その誰がかぶっていたかわからないサイズの合わないキチキチのヘルメットをイヤイヤかぶりながらフト思いました。

さっき事故現場で見たバイク乗りのヘルメットは新品のヘルメットだったのです。まさかとは思いましたが、そんなことは考えたくもありませんでした。


だってさっきまで自分がかぶっていたヘルメットが事故現場に転がっているなど考えたくもなかったのです。

 
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