不思議な話(二ーマンのピク詰め)復刻版H

      ー実際に体験した不思議な出来事の記録ですー

098 「管君」

偶然とは時として信じられないほどの極みにまで至ることがあります。中学生の頃に菅(かん)君という友達がいたのですが、ある日の放課後「家には金柑(きんかん)の木があって、金柑の実が沢山生っているから取りに来い」と言うので友達のI君も誘って学校の帰りにお邪魔することにしました。

言うだけのことはあって菅君の家の裏はチョッとした金柑の森のようになっていて黄色く色づいた実が山のようになっていました。


好きなだけ採って良いというのでI君と二人して手当たりしだい金柑の実をちぎるのですが、金柑はすぐに手に持ちきれなくなり、何か入れ物になるものを探しているとI君が偶然に業務用サイズの大きな缶詰の空き缶を見つけます。

金柑-s



菅君は何かの用事でその場にはいませんでしたのでそれを勝手に使ってよいものかどうかが気になりつつも、とりあえずその缶の中に金柑を入れている所に菅君が戻ってきます。I君の中でその缶を使っていることに対する後ろめたさがあったのでしょう、菅君に向かって慌ててこう言ったのです。

 


「菅君が来ないから、この金柑、この缶に入れたから」

…これは標準語に直したバージョンです。実際には方言で喋っていますから音的にはこうなります。


「カンクンコンケンコンキンカンコンカンにいれたケン」

これは当時の純真無垢な中学生の笑いの壺のド真ん中を刺激するには十分すぎるほどの効果がありました。

しばらくは金柑の森の中で「カンクンコンケンコンキンカンコンカン…」と大声で何度も繰り返しながら3人でのた打ち回りました。しかも途中から訳のわからない踊りまで付いてきたものですからそのまま笑い死んでしまうのではないかと思ったほどです。


今でも金柑の実が色づく頃になるとそのことを思い出します。

コオロギのアトリエ