110 「ペインティングハイ」
マラソンやジョギング中にエンドルフィンという脳内麻薬物質が脳内に分泌され一時的にハイな状態になるという「ランナーズハイ」という現象があります。走るのが苦手な私には一生経験することの出来ないものなのですが、感覚的には何となくわかる気がします。
と言うのは、絵を描いているとそれと似たような状態になることがあるのです。小さな画面ではそのようなことは経験していませんが、100号(166×166)以上の画面で制作しているとたまにそのような状態に似た感じを経験することがあります。
私はそれを「ペインティングハイ」と勝手に名づけているのですが、制作中の画面がこの上なく美しいものに見えてくるのです。その時はその画面をほとんど完璧な状態に感じてしまいますから一時的に至福の喜びを味わうことになります。
それはおそらくそれを経験した人でなければ絶対にわからない感覚で、その心地よさと言ったら筆舌に尽くしがたいものがあります。しかしそれは脳が勝手に勘違いしているだけですから何かの拍子に見事に現実に引き戻されるわけです。
結局その感覚を忘れられずに性懲りもなく描き続けるハメになるのですが、その脳の不思議な仕組みのお蔭で時として予想もしなかった大切なことに気づかされたりするのも事実なのです。
コオロギのアトリエ