不思議な話(二ーマンのピク詰め)復刻版H

      ー実際に体験した不思議な出来事の記録ですー

337 「復活」

家庭環境というのは人それぞれですが、幸せの形というのも人それぞれに違うようです。Xさんは病弱な母親とお酒と賭け事に明け暮れる暴力的な父親という絵に描いたような厳しい環境で育つのですが、ある時お酒に酔った父親がバイク事故を起こしてしまいます。

緊急に家族と近しい親せきが病室に呼ばれるほどの重傷で、結局治療の甲斐なく数時間後には皆に見守られながら息を引き取る段になるのですが、医師が父親の脈を取り左手の腕時計で臨終の正確な時刻を告げようとした時、Xさんは不謹慎だとは思いつつも正直、心の中では今の生活から解放される事に少しホッとしたそうです。

                  復活-s

その時、Xさんは不謹慎な気持ちでいるのを皆に悟られたのではなかろうかという強迫観念と、そんな事を考えた自分が許せないのとでプチパニックになり、Xさんはテレビや映画でよく観るところの娘が臨終の父親にすがりつき泣き崩れるというシーンを再現することでそれを打ち消そうとしたそうです。

ところが何と、Xさんが「お、おとうさん、おとーさーん…」と泣き崩れた時、不思議な事に父親の心拍数が正常に戻り意識も戻ったというのです。その後父親は1年半を病院のベッドの上で過ごすことになるのですが、Xさんの心境としてはチョット複雑だったと言います。2度目の臨終の時には静かに父親をお見送りしたそうです。

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